フロントはGMの知識の詰まった虎の巻です。フロントはそれぞれ、関連のある危難からなります。危難、それはプレイヤー・キャラクターに対する具体的な脅威、および彼らが気にかける人・場所・ものに対する脅威を指します。そこには1つ以上の差し迫った破滅、すなわちプレイヤー・キャラクターの介入がなければ発生する凶事が含まれています。言うまでもないことですが、「フロント」は「二正面作戦(fighting on two fronts)」に由来します。複数の戦線で異なる敵と対峙するがごとく、脅威、危機、冒険に取り巻かれた状況へと、プレイヤー・キャラクターを置くことになるからです。
フロントの組み立ては、忙しくプレイしていないときに行います。ゲームとゲームの合間に取り組むことのできる、GMひとりの楽しみというわけです。喜悦に満ちた仕草をして邪悪な高笑いをあげつつ、PCたちに挑んでくる敵を作りましょう。プレイ中に、フロントに手を加えたり、状況に合致するよう調整したりしてもかまいません(いつひらめくかわかりませんから)。ただし、フロントの主要部分は、セッションとセッションの合間の準備から生まれるものです。
フロントは、プレイヤーに敵対する物事を考えるにあたって、思考整理を助けるようにデザインされています。メモ書き、アイデアの羅列、敵対する勢力の計画などをまとめるためのものなのです。途方に暮れたとき、どちらに方向転換すればよいのかはフロントが示してくれます。「ああ、つまりこうすればいいのか」と膝を打つことでしょう。整理用ツールであると同時に、現在と未来をかき乱すアイデアの着想元という位置づけです。
フロントを構築する際は、ダンジョンの身の毛もよだつような住人全てを考え合わせてください。暴れ回る群れや、太古の狂信集団など、ゲームを通して目にしたいと思う存在に思いを馳せるのです。まずは大雑把に考え、次に、危難からフロントを組み立てることを通して、アイデアを絞り込むことができるでしょう。キャンペーン用フロントを書き出すなら、セッションとセッションの合間の動向に思いを巡らせてください。アドベンチャー用フロントを記述するなら、今この場で重要なのは何だろうと想像してみましょう。2〜3のフロントを書き終えたなら、準備万端整って、プレイヤーの意欲をかきたてる頃合いです。つまり、いつでもダンジョン・ワールドをGMできる状態ということです。
キャンペーン用フロントとひとつ目のアドベンチャー用フロントを作るのは、最初のセッションが終わってからです。キャンペーン用フロントの初稿は、穴だらけかもしれませんが、それでよいのです。地図上の余白と同じく、キャンペーン用フロントの未確定部分は、将来的に想像力を働かせる機会をもたらしてくれるのですから。
最初のセッションを終えたら、アドベンチャー用フロントもいくつか作ることになるでしょう。通常は1〜2個が適切な数です。もっと多くのアドベンチャー用フロントが思い浮かんだなら、差し当たっては書き留めておいて、手を着けずにフロント候補として検討していってください。
根本的なことを言うなら、あらゆるフロントは同じ構成要素から成り立ちます。構成要素により、危難は使い勝手のいい集まりに分類・集積されるのです。とはいっても、利用できるフロントには2種類あります。まず、セッションごとのレベルに位置づけられているのが、アドベンチャー用フロントです。このフロントは、各々数セッション利用が見込まれます。各アドベンチャー用フロントはひとつの厄介ごとに関連づけられており、プレイヤー・キャラクターはダンジョンを彷徨ったり目前の陰謀を暴いたりする中で、それに対処したり放置することになるでしょう。アドベンチャー用フロントは、いうなれば「今回のダンジョン・ワールドは…」から始まるテレビドラマの1エピソードの内容です。
アドベンチャー用フロントをひとまとめにしたものが、キャンペーン用フロントです。アドベンチャー用フロントが差し迫った危機、たとえば「ハーグロッシュ峠のオークども」で構築されているのに対し、キャンペーン用フロントの中身は「オークを略奪へと駆り立てる暗黒神グリシャカール」となるわけです。キャンペーン用フロントとは、ダンジョン・ワールドのキャンペーンのセッション全体に渡って、求心力をもたらす要素のことです。先触れはじわじわとあがる火の手に過ぎないでしょうが、やがて広範囲かつ根深い影響を世界に及ぼすことになります。そして最重要ポイントは、解決が可能となった時点で、より恐ろしい存在と化すことです。
アドベンチャー用フロントの危難が解決されることなく進行したなら、GMは決断を下さなければなりません。その危難をGMが気に入り、かつゲーム内のより広大な領域で活動する余地がある思ったなら、キャンペーン用フロントへの移行を躊躇わないでください。未解決に終わったちっぽけな危難を、後日、より大きな危難に作りかえることもできます。情勢によっては、キャンペーン用フロントの危難を、アドベンチャー用フロントに移動させることも起こりえます。
ここからはフロントを組み上げる方法を扱います:
ゲームにおける全ての要素が危難化されるとは限りません。トラップ、徘徊するモンスター、その他の儚なくちっぽけな存在などは、背景状況を加味するためだけに存在することが多く、危難を構成するに足るほどの重要性はないかもしれないからです。それでよいのです。フロントは全体像を把握しておくためにあるのですから。危難は少数のカテゴリーに分類されており、そのそれぞれには「名称」と「欲求」とが付属します。
全ての危難には極めて重要な動機があり、「欲求」と呼称されるその動機こそが危難を突き動かします。「欲求」は危難を理解する一助となるようなものです。どうして、「危難」は「差し迫った破滅」の成就に突き動かされているのでしょう? また、危難からアクションを考え出すにあたっても、「欲求」は役立つかもしれません。
フロント構築のために「危難」を作成する場合は、フロント全体の一側面として、おのおのがどのように影響し合うのかを考えてください。フロントが描き出す世界にとっての「脅威」を構成する可能性を持つ、人、場所、ものに目を向けましょう。ひとつひとつの「危難」は、フロントにいかに寄与しているのでしょうか?
例えば、氷に閉ざされた北方で古代のポータルが発見されたという、フロントの案があるとして進めよう。このフロントのことを「白き門の開放」と呼称する。
人やモンスターをから手を着けるのが一番容易いものです。狂信者、オーガ、族長、デーモンの大君主の類は、全くもって申し分のない「危難」です。単なるモンスターという立ち位置を超越しているクリーチャー存在は、独力で重大な脅威となります。モンスターの一団、例えば、ゴブリンの部族や、暴れ狂うケンタウロス汗国の民なども「危難」になりえます。
作成中のフロントとして、門に興味を持つ可能性のある、複数の異なる集団や人々が選択できる。たぶん、秘術師の学院は当てはまる。ゴーレムもそうだ。忘れ去れたポータルを守っていることにしよう。ただし、ゴーレムは単なる障害なので、「危難」にはしない。
考えの範囲をさらに広げてみることで、あまり目立たない世界の要素が「危難」になるかもしれません。荒涼たる地形、知性を持つ魔法のアイテム、時を織りなす太古の呪文などです。こういったものが同じ目的、そう、狂えるネクロマンサーが抱くような目的を実現することになります。なんせこれらは、世界に危機をもたらす、フロントの一部なのですから。
フロントとして、ゲートそのものを「危難」に追加する。
最後に、先のことを考えて、全体を覆う「危難」を盛り込んでおくこともできます。そういった手合いは、目に映る領域の外側から影響を及ぼしてきます。神のごとき支援者、秘密の陰謀、成就を待つ呪詛のこもった予言などがあてはまります。
おそらく、白き門は太古の昔に造られ、裁きの日が訪れるまで、天使種族によって隠されているのだろう。フロントの新たな「危難」として、白銀の熾天使を追加する。
いつでも追加の「危難」をフロントに付け足すことはできるものの、最大でも3つに止めて発見の余地を残しておきましょう。マップのように後付けで、余白はいつでも埋めることが可能なのですから。プレイヤー提案と将来の閃きのために余地を残しておけば、GMはフロントを自由に変更して、ゲームに合致したものにすることができます。起こりうるよくない出来事全てが、「危難」化するに相応しいとは限りません。判断に迷ったなら、「危難は例外なく深刻化する」ことを念頭に置いて考えてみるとよいでしょう。
ゲート近辺の未開部族、氷に覆われたツンドラそのもの、ライバル冒険者の集団。以上全てはゲームにおいて「危機」をもたらす要素となりうるものの、今すぐ「危難」化するに足るほどの重要性はない。
「危難」を作成することで、フロントのコンセプト全体を小さく切り分けて、扱いやすい部品にすることができます。「危難」とは、フロントの適切な箇所にディテールを追加し、長期に渡るフロント運用を容易にする道具なのです。
「危難」の名称を決めてフロントに追加したなら、下記のリストから危難のタイプを選ぶ必要があります。あるいは、「危難」の着想を得るためにこのリストを用いてもかまいません。フロントを念頭に置きつつ、リストを丹念に読んで、合致するものを1〜2項目選択しましょう。
「危難」3つ(秘術師の学院、白き門、白銀の熾天使)に対して、秘密結社、暗黒のポータル、天使の一団、をそれぞれ選択する。
極めて簡潔な説明を書き添えることで、「危難」がどのようなものであったかを思い出せるようにしましょう。事態の進行や起こりうる出来事については気にしなくてかまいません。そちらは「不吉な兆し」と「差し迫った破滅」の領分なのですから。それらの使い方についてはもう少し先で触れます。ある「危難」に関係している人物が複数いる場合(オークの部族戦士長、その一族、忌まわしき神とその奉仕者など)は、それぞれに名前をつけ、その時点で1〜2個のディテールを与えおきましょう。プレイ中に追記できるよう、余白をあけておいてください。
時には「危難」から、既存のムーヴでは扱われていない、独自のムーヴが思い浮かぶかもしれません。GMはその「危難」のために、カスタム・ムーヴを書いて補完するか、適切な効果を追記することができます。GMの裁量次第で、カスタム・ムーヴは、プレイヤーのムーヴにもGMのムーヴにもなりえます。プレイヤー・ムーヴとして書き出す場合は、当然ながらGMがダイスを振るような方式は避けて、ムーヴの基本的な作りに留意しましょう。つまり、10+なら完全成功、7-9なら部分成功です。ミスなら、カスタム・ムーヴ固有の処理が行われるかもしれませんし、行われないかもしれません。後者の場合、単にGMのムーヴを使う機会がもたらされるか、不吉な兆しを達成に向けて前進させることになるでしょう。カスタム・ムーヴの書式は、ムーヴにより異なります。
白き門の開放時に、間抜けなPCがゲートから漏れ出る光を浴びる羽目になるのは自明の理だったので、何が起こりうるのかを示すムーヴを書いておく。
彼方よりの光が差し込む場に身を置いたなら、ダイス・ロール+WIS。*10+なら価値ある存在と評価され、白銀の熾天使が幻視か恩恵を授けてくれる。*7-9なら疑念を抱かれてしまい、生き方を改めなければ降りかかるであろう陰鬱な最後の幻視を目にすることになる。*ミスなら、汝は天秤で量られ、己が至らぬところを知る、だ。
「不吉な兆し」とは、危難が野放しにされた場合に起こりうることを描く、腹黒い設計図のことです。危難が世にあるのにPCが何もしなければどうなるのか、思いを巡らせてみましょう。心に思い浮かんだひどい出来事全てが、世界に降りかることになるわけです。ぞっとしませんか? つまり、「不吉な兆し」は、危難の構図と陰謀を体系化する手段なのです。「不吉な兆し」は、単独の注意を引く出来事という形も、連鎖する状況の一段階という形もとりえます。次に何をすればいいのかわからなくなったなら、「不吉な兆し」が達成される方向へと危難を推し進めましょう。
たいてい、「不吉な兆し」は、理にかなった順序を備えています。例えば、オークどもが都市を破壊するのは、和平交渉が不首尾に終わった場合のみ、といった具合です。わかりやすいフロントは、まずい事態、状況の悪化、さらに悪化という、はっきりした経過をたどります。ときには、「不吉な兆し」が「差し迫った破滅」には直結しない経路を取ることもあるでしょう。危難の早期の兆候は、全部が全部、関係しているとは限りません。フロントの複雑さはGMの匙加減によります。危難が発生するたびに、そのフロントにある他の危難に目を通してください。複雑なフロントなら、「不吉な兆し」を抹消したり、作りかえたりする必要が生じるかもしれません。そうすることは問題なく、GMにも認められています。規模にも留意してください。「不吉な兆し」のすべてが、世界を揺るがす必要はないのです。危難の方向転換を示すに過ぎないこともあります。そこに芽生えた新たな手段の中には、世界に災難を振りまくものもあるでしょう。
「不吉な兆し」を、舞台の裾で出番を待つ、有望なムーヴだと考えてください。機が熟したなら、世界に解き放ちましょう。
新規のフロント用にいくつかの「不吉な兆し」を選定した。
不吉な兆しが実現したなら、そこに印をつけてください。予言は現実のものとなったわけです。不吉な兆しの発生は、他のフロントにも波及するかもしれません。プレイヤーに応対する合間を縫って、素早く見直し、気兼ねなく修正しましょう。ひょっとすると、取るに足りない「不吉な兆し」が、キャンペーン全体の通奏低音となるかもしれません。
「不吉な兆し」の進行は、描写的あるいはルール的に、行うことになります。描写的な進行とは、プレイ中に変化が発生するのを目にしたので、完了の印をつけることを指します。たとえば、プレイヤー・キャラクターたちがゴブリン部族に加勢して、その宿敵たるリザードマンと敵対したとしましょう。そうして、ゴブリンどもはトンネルを支配下に置くことになりました。驚いたことに、これこそが「不吉な兆し」の次の段階だったのです。ルール的な進行とは、プレイヤーがムーヴで失敗したことや、絶好の機会をもたらしたことが原因で、ハード・ムーヴとして不吉な兆しを進行させることを意味します。ある段階が現実のものとなったなら、その影響を提示した上で、「じゃあ、どうする?」と繰り返したずねてください。
あらゆる危難の終端には、「差し迫った破滅」が控えています。これこそが、危難が勝利をおさめ解消されたことを知らせる、弔いの鐘の音です。「不吉な兆し」が現実のものとなったなら、「差し迫った破滅」は力を増大させ、世界での存在感を強めます。非常にまずいことに、どの危難も、どうにかして、そのような結果をもたらそうとしてきます。「差し迫った破滅」の種類を1つ選び、フロント内での具体的な形を与えましょう。世界の諸問題にプレイヤー・キャラクターが干渉するため、「差し迫った破滅」はしばしばプレイ中に変更を余儀なくされます。後から手を加えてもよいのですから、やきもきしないでください。
ある危難の「不吉な兆し」が全部発生したなら、「差し迫った破滅」が始まります。危難はその後に解消されるものの、状況設定は激変してしまいます。これにより、ほぼ確実にフロントそのものも変貌することになります。この手の影響をきちんと世界中に波及させることで、起こった出来事をぐっと真に迫ったものとすることができるでしょう。
まつわる問いとは、GMが興味を抱いた人々/場所/集団に関連する質問のことです。人々は、GMの選んだPCとNPCを含みます。GMの心得に「何が起こるのかを発見すべくプレイする」とあったのを覚えておられますか? まつわる問いは、GMが目にしたいと望むことを思い出す手段なのです。
まつわる問いは具体的ではっきりとしたものです。まつわる問いを、漠然とした感じや漸進的な変化として記述してはなりません。PCたちと世界に影響を及ぼす、重大な変化に関する問いかけなのですから。優れたまつわる問いは、答えが出た時点で、もはや物事が元通りにはならないという結果を伴うのです。
まつわる問いで肝心なのは、GMの抱く興味です。GMが心から知りたいと願うと同時に、その帰結をプレイに委ねることのできる、そんなものにすべきです。まつわる問いとして記述してしまったなら、それはGMの手を離れ、もうおいそれとは手を加えられません。そう、答えを見いだすにはプレイするより他ないのです。
どうなるのかを見いだすべくプレイすることは、ダンジョン・ワールドを遊ぶ上で最大の報酬のひとつです。この世界で起きている出来事に携わる、どうなるのか見てみたい事柄を書き出しておくことで、まさにその答えへとたどり着けるのですから。
まつわる問いが決まれば、フロントはプレイへの準備が整ったことになります。
まつわる問いには、プレイ・グループにあつらえた、次の項目が含まれる:
フロントは大抵、単純明快な方法で解決されることになります。1つのダンジョンを描くフロントは、英雄的行為により、危難の数々が破壊されるか、役立つ存在に変えられるか、克服されるかもしれません。その場合、フロントは解体・除去されます。もしかすると、残り続けるフロントの要素(未解決のままの危難や、片付けられた危難の生き残り)があるかもしれません。そんな場合は、新たな危難として、キャンペーン用フロントに移行するのもありでしょう。
キャンペーン用フロントの解決はもう少し骨が折れます。キャンペーン進行の推移に伴う形で、ゆっくりと少しずつ解消されることになるでしょう。フロントを一度にまとめて導入したり解消しようとはせず、ばらばらに実施していってください。プレイヤー・キャラクターは、キャンペーン用フロントに配されている、多種多様な巨悪の手先を打ち負かすべく奮闘することになります。それでも最終的には、暗黒神に立ち向かったり、アンデッド禍が世界に蔓延することになって、苦境から英雄が生まれ、血塗れになりつつも勝利を掴む、あるいは絶望的な敗北を喫することで、キャンペーン用フロントは解消されるでしょう。キャンペーン用フロントへの対処は時間がかかるものの、最終的には最高に満足できる形で解決されるのです。
フロントが解決されたなら、腰を落ち着けてその影響について考える時間を取りましょう。実現した不吉な兆しはありますか? 危難が食い止められたとしても、不吉な兆しが達成されたなら、わずかであれ世界は変わってしまうのです。今後フロントを書く際は、そのことに留意してください。今回打倒されたフロントから、よそに移すことのできる人物はいるでしょうか? 昇進したもの、名声を損なったものはいませんか? このようにフロントの解消もまた、重大事なのです!
アドベンチャー用フロントの解決は普通、冒険そのものの決着を意味します。まさにキャンペーン用フロントを再考する好機です。それを次のアドベンチャー用フロントの起点としましょう。新たなアドベンチャー用フロントを記述するか、既に手がけているものに磨きをかけ、付け加える地図を描いて、次なる大騒動を準備するのです。
キャンペーンを開始するにあたって、GMはそこそこ詳細なキャンペーン用フロント1つと、詳細なアドベンチャー用フロント1〜2つを、準備していることでしょう。プレイヤー・キャラクターは、冒険の途中で、別方向に進んで行くかもしれません。部分的にしか解決されていないアドベンチャー用フロントが、いくつか残ってしまう可能性もあります。これは問題ないばかりか、生き生きとした世界を切り拓いてゆく素晴らしい手段といえます。プレイヤー・キャラクターが現場で目の当たりにしてようがいまいが、フロントは同じペースで進展することを、いつでも心に留めておいてください。画面外のことも考えるのです。そこにフロントが関係している場合はことさらに。
アドベンチャー用フロント2つを同時に運用する際は、絡み合わせてもよいですし、関わりを持たせなくてもかまいません。無政府主義者が都市を内側から堕落させることは、市壁の外側に集結するオークとは異なるフロントですが、両者は同時進行するかもしれないのです。一方、ダンジョンはその仕切り壁の内側に、複数のフロントを登場させるかもしれません。呪われた場所が有する力と影響、いがみ合う複数の在住ヒューマノイド部族などです。
複数のアドベンチャー用フロントが絡み合う状況で、ひとつならぬ「差し迫った破滅」が存在する場合、フロントの及ぼす影響は等価であっても、つながりを持たせる必要はありません。たとえば、無政府主義者どもの「差し迫った破滅」は都市の大混乱で、オークの群れの差し迫った破滅は徹底的な破壊だとしましょう。両者は別のフロントであり、各々の危難の有します。お互い相手の動きに対処するでしょうし、さらに、プレイヤーが付く勢力を選んだり、フロント内の危難が相争うよう仕向ける余地もあるわけです。
複数のアドベンチャー用フロントに対応することになった場合、プレイヤーは優先順位を決める公算が高いでしょう。今は狂信的教団が要注意なので、オークは後回しにできる、あるいはその逆、といった具合です。この手の決断は、結果的に放置されたフロントをゆっくりと進行させることになります。そして、ゆくゆくはプレイヤー・キャラクターに更なる問題を降りかからせ、新たな冒険を招き寄せるのです。3〜4個のフロントをいちどに動かしたら、この処理が複雑化しかねません。忙殺されないよう気をつけてください。
欲求:権力の座にあるものを取り込み、成長する
差し迫った破滅:簒奪
欲求:デーモンを吐き出す
差し迫った破滅:滅亡
欲求:裁きを下す
差し迫った破滅:暴政
氷に覆われた北部に永年埋もれていた、太古の門(ゲート)。純粋なる光の領域(レルム)へと通じており、白銀の熾天使に守られている。まさに裁きの日に開かれ、熾天使が現れ出て人界を浄化するべく、作られた代物。最近、秘術師の学院によって発掘されたが、学院はその恐るべき力をまだ理解していない。
彼方よりの光が差し込む場に身を置いたなら、ダイス・ロール+WIS。*10+なら価値ある存在と評価され、白銀の熾天使が幻視か恩恵を授けてくれる。*7-9なら疑念を抱かれてしまい、生き方を改めなければ降りかかるであろう陰鬱な最後の幻視を目にすることになる。*ミスなら、汝は天秤で量られ、己が至らぬところを知る、だ。