モンスター

モンスター領域一覧

大洞窟に住まうもの

沼地に棲まうもの

アンデッドの軍勢

暗闇の森

貪欲なる群

実験成果のなれの果て

地下の奥深く

別次元界の勢力

王国の人々

偉大な英雄には背筋の凍るような闘争相手が必要です。この項では、卑しいゴブリン戦士から地獄のデーモンに至るまでの、敵対者の作成およびプレイ方法を扱います。

モンスターの運用

モンスターとは、プレイヤー・キャラクターの行く手に立ち塞がる生き物(あるいはアンデッド)のことです。

こういったモンスターを運用するには、GMの心得と方針に素直に従うことです。GMの方針を真摯に守り、ムーヴを用いて心得の達成を目指してください。そうしていれば道を誤ることはありません。

最初の心得は「ファンタジー世界を活写する」です。プレイヤー・キャラクターの対峙するモンスターと敵対者を描写する過程は、この心得の実行を助ける手段となることでしょう。こういったクリーチャーや人々の生き生きとしたディテールを描くことで、命を吹き込むのです。やがて、この手のモンスター用の能力が必要になるかもしれません。この章に収録されたルールは、そういった能力を手早く簡単に作成する一助となるでしょう。

プレイヤー・キャラクターはヒーローです。モンスターは、ダンジョン・ワールドの舞台となる危険で恐るべき場所がどのようなものかを、表すべく存在しています。ヒーローたちが介入しなかった場合、どのような形をとって居残り続けるのでしょう? GMはモンスターが勝利するよう後押しすべきではありませんが、モンスターはヒーローに挑んでくるでしょうし、ときには打ち勝つことすら起こりえます。モンスターがあまりにあっさりと撃退されると感じても、憂慮しないでください。プレイヤーたちに勝利を大いに楽しんでもらいましょう。モンスターは尽きることがないのですから。

その根本原理を要約すると、心得の「物騒な考えを心がけよう」になります。あらゆるモンスターを、プレイヤー・キャラクターに向かって放たれた矢として考えましょう。モンスターとは、GMの提示する危機で作られた弾丸なのです。中には、ほかよりも利口だったり、俊敏だったり、危険だったりするモンスターもいることでしょう。しかし、名前、性格、その他の特別に留意すべき事柄が認められるまでは、単なる矢に過ぎません。狙いを定め、発射しましょう。的を外したってかまいません。

何事かが起きて光が当てられたとき、モンスターは単なる矢弾であることをやめます。《物言う知見》が興味深い観点の説明をもたらすのかもしれないし、GMの質問に対するプレイヤーの答えを拾ってことを進めた結果そうなるのかもしれません。もしかすると、プレイヤー・キャラクターが戦闘で圧倒され、逃亡を余儀なくされたことから、戦っていた化け物に対する新たな恐怖や敬意がかきたてられるのかもしれません。そういった物事が発生したなら、躊躇することなくモンスターに名前を与え、それを表現する危難の作成を検討してみましょう。

GMの心得と方針に書かれていないことのひとつに、公平な戦闘の組み立てがあげられます。ヒーローはしばしば数で勝られ、話にならないほど勝算の低い状況に直面します。ときには撤退して、新たな計画を練る必要に迫られるでしょう。場合によっては損失を被ってしまいます。モンスターをフロントに追加する/ダンジョン内に配置する/その場の判断で作成するときに、GMの最も重要な責務は、物語に寄り添わせ(ファンタジー世界を活写する)、プレイヤー・キャラクターに本当の脅威を提供する(プレイヤー・キャラクターを英雄にする)ことであり、バランスのとれた戦闘を作り上げることではありません。ダンジョン・ワールドは、遭遇レベルのバランスをとったり、経験点の集計を目的とするゲームではないのです。冒険と命知らずの偉業こそがその本質なのです!


モンスターを構成する諸要素

あらゆるモンスターはムーヴをもち、それによって行動や能力が説明されます。通常のGM用ムーヴと同じように、アクションが途切れたとき、あるいはプレイヤーが絶好の機会をもたらしたときに、GMの実行するのがモンスターのムーヴです。他のGM用ムーヴ同様、周辺状況とムーヴの内容次第で、ハードにもソフトにもなり得ます。不可逆で即座に影響を及ぼすのがハード・ムーヴで、今にも発生しそうだったり容易に対処できたりするのがソフト・ムーヴです。

モンスターにはそれぞれ本能があり、それによっておおよその目的が述べられます。中には、征服/財宝/単純な流血のために生きるモンスターもいます。モンスターの本能は、物語の中でそれを活用する指針となるわけです。

モンスターの説明は、付随するその他の特徴すべてを指します。説明によって、モンスターが本当はどのような存在であるかをGMは理解します。他の諸要素は、この説明を反映したものに過ぎないのです。

ダメージは、そのモンスターがいちどに与えることのできる苦痛の量です。プレイヤー・キャラクターのダメージと同様に、振るダイスと、おそらく修正値からなります。対象が他のモンスターであれプレイヤー・キャラクターであれ、モンスターが物理な危害を発生させるときはいつでも、このダメージを与えることになります。

各モンスターはタグを有しており、これにより(攻撃の射程を含む)ダメージを与える方法が述べられています。射程外(近すぎるか遠すぎる)のものを攻撃しようとするなら、うまくいかず、ダメージは発生しません。武器に付与されるタグ([滅茶苦茶]や[手間取る]など)は、モンスターにも付く可能性があります。

モンスターのみに搭載される特別なタグもあります。次に列挙するその手のタグは、そのモンスターの要となる特性を表します。どれぐらい大きいのか、とか、(組織的に動くなら)どの程度団結しているのか、といった性質を表すわけです。

モンスターのHPは、死亡するまでに受け止めることのできしますダメージ量を示す。プレイヤー・キャラクターと同じく、モンスターがダメージを受けたなら、その合計をHPから差し引くことになります。HPが0になれば、《死に際》なしで死亡します。

モンスターの中には幸運にもアーマーの恩恵にあずかるものもいます。プレイヤー・キャラクターのアーマーと扱いは同じです。アーマーを持つモンスターがダメージ受けたなら、アーマーの値が降りかかるダメージから差し引かれます。

特質とは、プレイに大きな意味を持つ、そのモンスターの生得的な特徴を示します。物語の文脈(フィクション)、ひいてはムーヴの手引きとなるものです。[非実体]のような特質は、文字通りの意味を持ちます。非魔法的なものは通り抜けてしまうのです。なので、そいつに魔法を宿さないソードを振り下ろしたところで、《ハックアンドスラッシュ》にはなりません。

能力値のないモンスター

クリーチャーの中には、定命の人の子の基準を超越した規模で活動するため、そもそもHP/アーマー/ダメージといったものを持たないものもいます。クリーチャーによっては、戦闘においてはまったく危険ではありません。こういったクリーチャーはそれでもなお、プレイヤー・キャラクターの頭痛の種となりえますし、冴えた頭や十分な準備によって打ち負かすことのできる可能性もあります。

クリーチャーがプレイヤー・キャラクターを遙かに超える規模だったり、単に物理的な戦闘を挑んでこない場合、HP/ダメージ/アーマーを与えないでください。モンスター作成ルールを用いてタグを付与するのはかまいません。能力値のないモンスターの中核となるのは、その本能とムーヴです。数値的な能力値なんてなくても、ムーヴを行使し、本能に従った行動をとることはできるのですから。


モンスターのタグ

[魔法存在]:生来、頭のてっぺんからつま先まで魔法が行き渡っている。

[悪辣]:主たる危険は、単純な戦闘における衝突以外のところにある。

[不定形]:生体構造と器官は奇怪で自然の理に反する。

[組織的]:集団を構築することで、生存の一助としている。1体が倒されれば、残りは激怒することだろう。単体でも危険を知らせるかもしれない。

[知的]:利口であり、中には複数の技能を修得しているものもいる。GMは、特別な訓練を反映したタグ([魔法使い]や[戦士]など)を追加して、モンスターを改造することができる。

[蓄財]:ほぼ確実に財宝を持つ。

[隠密]:発見されない振る舞いができ、意外なところからの攻撃を好む。

[恐怖存在]:存在そのものや外見が恐怖を呼び起こす。

[慎重]:攻撃よりも生き残ることを重んじる。

[コンストラクト]:生まれたのではなく、作られた存在。

[別次元界]:この世界の外から来た。

編成タグ

[大群]:1体を見かけたなら、もっといる。さらにたくさんいる。

[一団]:通常、3〜6体程度の少数集団でいるところを目撃される。

[単体]:独りで生き、独力で戦う。

サイズ・タグ

[極小]:ハーフリングよりもずっと小さい。

[小型]:ハーフリング程度の大きさ。

[大型]:ヒューマンよりずっと大きく、だいたい荷馬車ぐらい。

[超大型]:小さな家屋かそれ以上の大きさ。


モンスターの作成

モンスターはGMの描写から生まれます。モンスターをプレイ前に作成するにせよ、即興により顔をつきあわせることになったにせよ、モンスターがどのような存在でどんなことをするのかという像を、はっきりと描くところから始めましょう。

セッションとセッションの間にモンスターを作成する場合は、想像力を働かせるところから着手してください。どのような見てくれなのか、どういったことをしてくるのか、どうして立ちはだかるのか、想像してみましょう。そのモンスターにまつわる物語と、世界にどのような影響を及ぼすのか、思い描くのです。

セッション中、即興的にモンスターを作る場合は、プレイヤーに対してその描写を行うのを皮切りにしてください。描写は、プレイヤー・キャラクターがモンスターを目にする以前からでも開始できます。住んでいる場所と、周辺の環境に残された痕跡とを述べましょう。GMの描写はそのモンスターの手掛かりとなるわけです。

モンスターの能力値が必要だと感じたなら、次にあげる一連の質問を用い、確定してください。それまでに出た設定と心に描いた事柄を踏まえて、すべての質問に答えましょう。声に出して他者に答えるのではなく、回答と、回答記載の能力値とを、書き留めるにとどめてください。

別々の質問が、同じタグを付与したとしても、気にしないでください。なんなら、重なったタグを反映するべく、ダメージやHPを2点上昇させる調整を施してもかまわないものの、必須ではありません。回答の組み合わせにより、HPやダメージが1を下回った場合は、1に留め置いてください。

モンスターが仕上がった段で、たったひとつしかムーヴを持っていないことも起こりえます。そうなってしまったけど、このモンスターを頻繁に使用するつもりなら、他のムーヴを1〜2個選んで付与しましょう。そういったムーヴは大抵、副次的な攻撃手法や、主要な攻撃方法の応用、世界の中にある特定の場所との繋がりなどを表すものとなります。

どんなことをするものとして知られているのか?

モンスターの行動を描写するムーヴを、1つ記入

何を望むがゆえに、他者にとっての頭痛の種となるのか?

これが本能となる。どういう行動に出るつもりなのかを記入。

通常、どのようにして狩り/戦闘を行うのか?

  • 大きな集団で:[大群]、d6ダメージ、3HP
    • 小さな集団で:[一団]、d8ダメージ、6HP
      • ただ1体で:[単体]、d10ダメージ、12HP

        どれぐらいの大きさなのか?

        • 家猫よりも小さい:[極小][手近]、-2ダメージ
          • ハーフリング程度:[小型][近接]
            • だいたいヒューマンの寸法:[近接]
              • 荷馬車と同等:[大型][近接][長物]、+4HP、+1ダメージ
                • 荷馬車よりも大きい:[超大型][長物]、+8HP、+3ダメージ

                  最も有用な防御は?

                  • 衣服や表皮:0アーマー
                    • レザーアーマーや分厚い皮膚:1アーマー
                      • メイルアーマーや鱗:2アーマー
                        • プレートアーマーや骨:3アーマー
                          • 恒久的な魔法の守り:4アーマー、[魔法存在]

                            どういったことで有名なのか?(当てはまるものすべてを選択)

                            • 衰え知らずの剛力:+2ダメージ、[強烈]
                              • 攻撃の技量:ダメージを2回振って、よい方の出目を採用
                                • 防御の技量:+1アーマー
                                  • 巧みな攻撃:+1[貫通]
                                    • 尋常ならざる耐久力:+4HP
                                      • 虚偽と策略:[隠密]、卑劣な手段に関係するムーヴを1つ記入
                                        • 水陸両生や翼といった有益な適応形態:適応形態用に特質を1つ追加
                                          • 神々の恩寵:[神性]、+2ダメージ/+2HP/あるいはその両方(GMが決定)
                                            • 呪文と魔法:[魔法存在]、呪文に関係するムーヴを1つ記入

                                              最も頻度の高い攻撃形態は?

                                              クリーチャーのダメージの横に書き留めること。一般的な回答としては、武器の種類、鉤爪、特定の呪文があげられる。それから、その攻撃形態に関する以下の提案を検討しよう:

                                              • その武装は残忍で目立つ:+2ダメージ
                                                • それによってモンスターは他者を追い詰めておくことができる:[長物]
                                                  • その武装は小さくて弱い:ダメージ・ダイスのサイズを1段階引き下げる
                                                    • その武装は金属を引き裂く/貫く:[滅茶苦茶]、+1[貫通]、文字通り金属をバラバラにできるなら+3[貫通]
                                                      • 防具は(魔法、大きさなどの要因で)そのダメージ対して役に立たない:[アーマー無効]
                                                        • 大抵は(矢、呪文、その他の投射物による)遠隔攻撃を行う:[近距離]/[遠距離]/その両方(GMが決定)

                                                          次の描写のうち該当するのは?(当てはまるものすべてを選択)

                                                          • 与えてくる傷はたいしたことないが、別の理由があって危険:[悪辣]、ダメージ・ダイスのサイズを1段階引き下げる、危険な理由に関係するムーヴを1つ記入
                                                            • 助けを求めることのできる大集団を組織している:[組織的]、他の仲間の助けを求めることを目的とするムーヴを1つ記入
                                                              • 人間と同程度に賢い:[知的]
                                                                • 盾などを使って積極的に自らを守る:[慎重]、+1アーマー
                                                                  • 人間が価値を認めるような小物(金貨、宝石、秘密など)を収集する:[蓄財]
                                                                    • この世界の外から来た:[別次元界]、別世界の知識や力を用いる事に関係するムーヴを1つ記入
                                                                      • 単純な生物を越える要素を持ち、それによって生き続けている:+4HP
                                                                        • 誰かによって作られた:[コンストラクト]、構成物や目的に関係する特質を1〜2個付与
                                                                          • 心をかき乱す/ひどく不快な/身の毛もよだつ外見:[恐怖存在]、それほどまでに恐ろしい理由に関係する特質を1つ記入
                                                                            • 器官や認識可能な生態構造を持たない:[不定形]、+1アーマー、+3HP
                                                                              • この個体(あるいは種族)は古くから存在しており、人類、エルフ、ドワーフよりも歳を経ている:ダメージ・ダイスのサイズを1段階引き上げる
                                                                                • 暴力を忌み嫌う:ダメージを2回振って悪い方の出目を採用する

                                                                                  財宝

                                                                                  モンスターは、冒険者と全く同じように、有益な光りものを集めます。プレイヤー・キャラクターがモンスターの所有物(身につけているか、どこかに隠されている)を探すなら、どのようなものがあるか正直に描写してください。

                                                                                  モンスターがなんらかの財を溜め込んでいる場合、ダイスでランダムに決定することができます。モンスターのダメージ・ダイスに、モンスターの有り様による次の修正を加えてください:

                                                                                  • [蓄財]:ダメージ・ダイスを2回振って、高い方の出目を採用
                                                                                    • 生息地から遠く隔たっている:保存食(類似した味覚を持つものは使用可能)を少なくとも1つを追加
                                                                                      • [魔法存在]:どこかしら奇妙なアイテム、ひょっとすると魔法の品
                                                                                        • [神性]:神(あるいは神々)のしるし1つ
                                                                                          • [別次元界]:この世ならざるなにか
                                                                                            • 他者を支配している:ダイス・ロールに+1d4
                                                                                              • 古くから存在し注目に値する:ダイス・ロールに+1d4

                                                                                                モンスターのダメージ・ダイスと、あれば追加のダイスを振ることで、モンスターの財宝を決めましょう:

                                                                                                1:コイン数枚、2d8枚かそこら
                                                                                                2:現在の状況に役立つアイテム1つ
                                                                                                3:そこそこの枚数のコイン、4d10枚程度
                                                                                                4:かなりの値打ちがある小型アイテム(宝石、美術品)1つ、2d10 x 10コイン相当の価値がある(重量0)
                                                                                                5:ちょっとした魔力の宿る小物
                                                                                                6:有益な情報(手掛かりや記録といった形をとる)
                                                                                                7:コイン袋、1d4 x 100枚程度(100枚あたり重量1)
                                                                                                8:非常に高価な小型アイテム(宝石、美術品)1つ、2d6 x 100コインの価値がある(重量0)
                                                                                                9:コインと他の高価な小物入りの箱1つ、重量1だが3d6 x 100コインの価値がある
                                                                                                10:魔法のアイテム/魔法の効果1つ
                                                                                                11:たくさんのコイン袋、合計2d4 x 100枚程度
                                                                                                12:地位の証(王冠、軍旗)1つ、少なくとも3d4 x 100コインの価値がある
                                                                                                13:大型の美術品1つ、4d4 x 100コインの価値がある(重量1)
                                                                                                14:珍しいアイテム1つ、少なくとも5d4 x 100コインの価値がある
                                                                                                15:新たな呪文1つを修得するのに必要なすべての情報、加えて再度この表を振る
                                                                                                16:ポータルや隠し通路(あるいはどこかへの行き方)、加えて再度この表を振る
                                                                                                17:プレイヤー・キャラクターの1人に関係するなにか、加えて再度この表を振る
                                                                                                18:宝物庫:コイン1d10 x 1000枚、1d10 x 10個の宝石(それぞれ2d6 x100の価値がある)


                                                                                                モンスター領域

                                                                                                この本に収録されているモンスターは、モンスター領域ごとに提供されます。モンスター領域とは、場所のタイプと、そこで出会う可能性のあるモンスターをまとめたものです。世界のどこにモンスターが腰を腰を落ち着けているのかによって、分類する方法といえます。フロントがどのモンスターが一致協力している/陰謀を進行させているかを教えてくれるのに対して、モンスター領域はどんな種類のモンスターが、ある地域に生息しているのかを教えてくれるわけです。

                                                                                                自作のモンスター領域を作成するときは、より限定的なものにすることができます。西部大草原や、馬の首長たちの領土といった、モンスター領域を作ることが可能なのです。

                                                                                                フロントへの投入を検討したり、フロントの1つの近辺にいる脅威が必要なときは、モンスター領域を調べましょう。たとえば、主人公たるPCたちがダンジョンのフロントであるクル・カ・ラ教団に立ち向かおうとして、教団の建造した古代遺跡を探検しているなら、「アンデッドの軍団」からモンスターを持ってきて、関連する脅威として用いることできます。実際にはフロントの一部をなすわけではないものの、それでもヒーローの行く手に立ち塞がるわけです。

                                                                                                各領域に記載された、太線で区切られたモンスターの能力値表記部分には、HP、ダメージ、モンスターのその他の特徴すべてが記されています。収録されているモンスターはすべて、上記と同じプロセスを経て作成されているため、そのような能力値となった理由は、能力値そのものと同じぐらい重要です。能力値の背景をなす根拠を検討して、ダンジョン・ワールドを遊んでいる途中で浮かび上がってくる「ノールの戦士団は村全体を占拠し略奪することができるのだろうか?」といった疑問を考えてみることにより、モンスターをその場しのぎではなく出現させることができるのです。

                                                                                                大洞窟に住まうもの

                                                                                                文明世界の辺境に位置する、世界の中でも古き山々の下にある洞窟やトンネルには、狡知に長け危険な種々のモンスターが棲まう。そこにはゴブリン族のように、ずる賢いろくでなしがおり、村を焼き家畜を奪い去る悪だくみを巡らす。あるいは、悪臭を放つゴミ喰らいアティグのように、異様な形で自然を逸脱したものもいる。では、このジメジメとした暗がりの地へと続く危険へと初めて足を踏み入れる勇敢な冒険者たちに、警告をひとつ。凶事は闇に宿るもの。そう、鋭い歯を持つ凶事が。

                                                                                                沼地に棲むもの

                                                                                                万物は、最終的に腐り果ててしまうもの。卓上の食べ物は傷み、人の心は老化と病をへて狂う。世界そのものさえも、顧みられず放置されたなら、黒い汚泥と異臭ただよう空気へと変じるかもしれない。ダンジョン・ワールドのそんな地域を住処とするものどもがいる。そいつらは、沼地のそこかしこにある渦を巻く汚物と同程度まで腐りきっている。こういった汚水の溜まった低地にて、冒険者たちは、命を奪う瞳をもったバジリスクや有名な不死身のトロールといったクリーチャーと出会うだろう。この手の悪臭を放つ沼沢地で生き延びるには、乾いたひと揃いの靴以上のものが必要になる。まずは剣をお勧めしよう。

                                                                                                アンデッドの軍勢

                                                                                                ヒューマンやドワーフの神々の訓話においては、死の訪いにてすべてが終わるとされる。騒々しきこの世から解き放たれ、息をひきとるに至ったなら、温もりと歌と天使の白き翼とで満ち足りると説くのだ。残念ながらさにあらず。みながそうなるわけではない。人によっては、命の抱擁が衰えた後に、暗黒の力が入り込んでくることもあるのだ。黒魔術は死者を大地から引きずりだし、憎悪と餓えに満ちたひび割れだらけの虚ろな命を与える。妖術と魔女術は、リッチと呼ばれる残骸となることで永遠に生きる力を、古代の魔法の創り手たちにもたらした。陰鬱な魔法は、ダンジョン・ワールドの暗い片隅の至る所で姿を現す。この手のクリーチャーは、そのような残忍な魔法から生まれいずる。

                                                                                                暗闇の森

                                                                                                ダンジョン・ワールドの一番深い森に並ぶ木々が、その根のあたりをヒューマンやエルフが歩くよりずっと以前からそこに屹立するとされるのは、偽りにあらず。そういった太古の木々が春に青葉を茂らせなくなって久しいのもまた事実である。暗闇の森というより糸の中で、正しい場所に目を向けるなら、年月を経た力ある森のクリーチャーが見つかる。この地に生きる種族は、野蛮なケンタウロスや、魂を盗み取る妖精のごときクリーチャーなどだ。古代樹の影の下にて、狼人(おおかみびと)が血を求めて遠吠えをあげる。古の林道沿いに先を急ぐなら、食事や暖をとるために火をつけることなかれ。火にあらざる光あるときは歩を速めよ。炎は森そのものの怒りを招くとされる。そんなことは望むまい。

                                                                                                貪欲なる群

                                                                                                「オークとの一騎打ちに勝利したことがある」と誇らしげに語るものがいる。「一匹でいるノールと戦って生き延びたんだぜ」と口にするものもいる。それでもたいしたことではあるが、こういった自慢話の真相はお察しの通り。この手のクリーチャーの1体を見つけたなら、害虫を見かけるのと同じで、恐るべき破滅が迫りつつあるという証だ。ひとりきりで旅をするオークはいない。よだれを垂らしたノールが群から離れて動くなんてことはないのだ。ほどなく、陣太鼓が鳴り響き、怒りに充ち満ちた戦士長とその配下の牙ある狂戦士どもが市壁を取り囲むことで、そうであったことがわかるだろう。この連中は、悲鳴と嘆きをもたらして、文明社会を屈服させる類のモンスターだ。そう、君たちが食い止めない限りは。幸運を祈る。

                                                                                                実験成果のなれの果て

                                                                                                秘術の業を学んだ徒の中には、千年の長寿や、人を焼き焦がす雷撃を発射することを可能とする程度では物足りないものがいる。死者と話をしたり、天界から天使を降臨させたりする力では、さほど満足しないものがいる。傲慢が、こういったマントとフードを身につけた「自然科学者」をして、奇怪で罪深い生命の製造へと走らせるのだ。生み出されるのは、死すべきさだめを背負った子らにあらず。ここに挙げるような、奇異なる魔法によって心の汚れきった存在を作り出す。この領域では、毒液をしたたらせるキメラのような悪夢と出くわすだろう。ここには、守護用のゴーレムや突然変異体の類人猿も収録されている。ダンジョン・ワールドの狂的魔術師の廃塔にて待ち受ける、諸々のよからぬアイデアが詰まっているのだ。

                                                                                                地下の奥深く

                                                                                                ダンジョン・ワールドの田舎には遺跡が点在している。衰退/モンスター/報復の神の気まぐれによって滅ぼされた文明の、忘れ去られて久しい古きとりでだ。こういった遺跡はしばしば、危険極まりない真実を覆い隠している。そう、トラップとモンスターで溢れかえる、カタコンベや入り組んだ地下構造を。もちろん、金貨もたっぷり。それこそ、君たちがここにいる理由といえよう。悪意に満ちたダーク・エルフ部族との死闘に身を投じるのはそれ故だ。諸国が収まるほどの広さを持つ大洞窟において石の巨人たちと戦おう。あるいは、みなは高潔な魂の主であり、いつの日か太陽を飲み込んで命あるものを滅ぼすといわれる魔獣、アポカリプス・ドラゴンに終焉をもたらすために世界の深奥へと旅してきたのかもしれない。心からその探求を称賛し、勇士たちのため一心に祈ろう。

                                                                                                別次元界の勢力

                                                                                                ときには、ダンジョン・ワールドとは全く異なるところからモンスターがやって来る。世界の果ての山脈の向こう、深海のさらに奥底。そして、賢者と博識な老司祭たちは遙か彼方の地へと繋がる門が存在するという。彼らは至福の地、すなわち美味なるワインの川が流れ、黄金の野で踊る乙女たちのいる場所のことも口にする。かつての次元界の扉の向こうに見出される、天空の楽園の話をする。物語はまた、一千の地獄のことも教えてくれる。渦を巻く元素精霊の旋風と悪魔どもが、血みどろの大破壊をもたらさんとして、ダンジョン・ワールドに侵入可能となる星のならびを待ち続けている、とも語られる。きっと、この手の話が真実なのか知りたくてたまらないだろう。彼方の地への道が開かれたとき、どのようなものを目にすることになるのだろう?